人々の憩いの場として毎日賑わう公園がある。
園内の中央にある大きな噴水広場は暑い時期に差し掛かると多くの子供たちが水遊びする光景を見られる。
普通のベンチの他カフェのテラス席のようなお洒落なデザインのテーブル席もあちらこちら設置しており、読書や食事など何気ない用事にも気軽に利用されている。
今日も多くの人で賑わいを見せる公園の一角、ベンチが一定間隔で置かれる歩道を歩いてくる老婆と孫の女の子の二人。空いているベンチの一つに腰掛けた。
周りには同じく孫連れや親子、恋人らしきカップルも掛けてそれぞれの時間を過ごしているようだ。
「…おばあちゃん、絵本読んでー」
「はいはい。このお話好きねえ」
「うんっ。だって面白いんだもん」
女の子が取り出した絵本は島に古くから伝わる神話を子供向けに分かりやすく解釈した内容だ。女の子はこの話を大層気に入っていて、事あるごとに祖母へ朗読をせがんでいる。
「……じゃあ読むわね。昔々……」
◇◇◇◇◇
クリエは悩んでいた。
相棒のシドーへいつからか恋をして、その恋心と現実の板挟みに苦しんでいる。
シドーは人の姿と人と相違ない心を持っているがそれでも神であることに変わりはない。言い切れないのだが、きっとシドーは長く生きる。人であるクリエや他のみんなは勿論魔物たちよりもずっと長く……。
それだから神と人では生きる時間の幅が違い過ぎるのだ。
例えるならばシドーの傍で紙くずを燃やすとしよう、紙くずはあっという間に燃え尽きて灰になる……それがクリエの命の時間だ。もし魔物だったら焚き火くらいの長さだろうか。それもやがては燃え尽きてしまう。
今は同じ時間を共有していると思うけど、いずれはシドーを置いていってしまうのだ……という考えがクリエの恋心の足枷と化していた。シドーへ気持ちを打ち明けられない。もし気持ちが通じ合ったとして自分が死ぬまで幸せな時を過ごしたなら、その後シドーはより一層寂しくならないだろうかと余計な心配を抱いてしまう。
ならば自分は相棒のままとして関係を維持し続けて、相棒としてお別れした方がシドーの悲しみは幾分減らせるかな、と意味がないかもしれない皮算用をする始末だ。
正直恋心は胸が苦しい程膨れ上がっているが、思うように息抜きも出来ない。諦めたくてもいつも隣にいてくれて、時に笑顔を見せて優しくしてくれるものだから、胸が締め付けられて切なくて諦めるのは無理そうだった。
平常を取り繕い、今日も素材集めとしてお花を採取していた。珍しく花畑の如く数種類が各々群生する色取り取りを目で楽しみ、匂いに気持ちを癒されて。
しばらく採取を続けているとシドーが沈黙を破った。
「……クリエ」
「…なあに?」
「オレと番い子供を生んでくれ」
「へぁ!!? ………変な声が出ちゃったよ。……ど、どうしたの突然……?」
採取に屈んでいた姿勢から立ち上がり、シドーへ向くとこれまた珍しい……照れくさそうに微笑んでいた。意図を計りかねて言葉に耳を傾ける。
「……あのな、オマエはそのうちオレの傍からいなくなっちまうだろ? このままなにもしないで手離すのはイヤだと思ったんだ。思い出した昔の記憶を探ったり、周りのヤツらから学んだりしてオレのこの気持ちは………クリエを好きだっていう感情だと理解した」
〈好き〉の単語にドキリと胸が反応した。
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